人間の寿命に影響を与える要因には、遺伝や環境、食生活などさまざまなものがあります。
その中でも、近年ますます注目されているのが「心のあり方」です。
怒りや妬みと同じように、不安や思い煩いもまた、体と心を蝕む大きな要因となります。
聖書はこの点について明確に警告し、また希望を与えています。
1. 思い煩いと寿命の関係
マタイによる福音書の6章27節でイエスはこう語られました。
「あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。」
思い煩いは寿命を延ばすどころか、むしろ縮める原因となります。
心配や不安は交感神経を常に緊張させ、呼吸を浅く速くし、血圧を上げ、体を消耗させます。
慢性的なストレスが病気の温床になることは、現代医学でも広く認められている事実です。
つまり、イエスの言葉は、単なる霊的な慰めにとどまらず、生理学的な真理をも含んでいるのです。
2. 感謝と祈りがもたらす平安
ピリピ人への手紙4章6〜7節には次のように記されています。
「何事も思い煩ってはならない。ただ、事ごとに、感謝をもって祈と願いとをささげ、あなたがたの求めるところを神に申し上げるがよい。そうすれば、人知ではとうてい測り知ることのできない神の平安が、あなたがたの心と思いとを、キリスト・イエスにあって守るであろう。」
思い煩いを取り除く方法として示されているのは「祈り」と「感謝」です。
人は不安にとらわれると視野が狭くなり、未来を暗く見積もりがちです。
しかし、祈りによって心を神に向けるとき、自分の力ではなく神の導きに委ねることができます。
そして、小さなことにも感謝を見いだすとき、心は平安に守られ、体の緊張も和らぎます。
3. 精神的安定と健康長寿
心理学の研究でも、楽観的な人や前向きな人ほど寿命が長い傾向があると報告されています。
これは、ストレス耐性が高まり、免疫力が保たれるためと考えられています。
また、深い呼吸や瞑想、祈りなどは副交感神経を優位にし、心身をリラックス状態に導きます。
「思い煩わない心」とは、単にのんきに構えることではなく、神への信頼を土台にした精神的安定です。この安定が体を守り、寿命を延ばすことにつながるのです。
4. 実生活での実践方法
では、私たちが思い煩いから解放され、平安を得るにはどうすればよいでしょうか。
小さなことも祈りに委ねる
→ 自分で抱え込まず、神に委ねる姿勢を持つ。
一日の終わりに感謝を数える
→ 日記や祈りの中で、今日の恵みを振り返る。
深い呼吸を習慣にする
→ 不安に襲われたら、まずは呼吸を整える。
未来ではなく「今」を生きる
→ イエスは「あすのことを思いわずらうな」(マタイ福音書6章34節)と語られました。
5. 結び―神に信頼する心が寿命を延ばす
思い煩いは、体力と精神力を奪うだけでなく、寿命すら縮めてしまいます。しかし、神に委ねる信仰と感謝の心は、人のすべての知恵を超えた平安を与えます。
深い呼吸、感謝の祈り、日々の小さな平和を大切にする習慣―これらはすべて、寿命を延ばす秘訣であると同時に信仰生活そのものです。
「思い煩わない心」は、決して無責任な態度ではなく、最も確かな支えに身を委ねる姿勢です。そのとき、私たちの心と体は守られ、神の祝福のうちに健康長寿が与えられるのです。