空気には重さがある――これは現代人にとって、当たり前の科学的事実ですが、古代人が知ることはほぼ不可能でした。それを思わせる表現が、ヨブ記の28章25節に記されています。
彼が風に重さを与え、水をますで量られたとき、(ヨブ記28章25節)
「重さ」と「風」:原語から見た解釈
「重さ」にあたるヘブライ語 מִשְׁקָל (mishqal) は、「重量」「質量」「測られた量」を意味します。
「風」は רוּחַ (ruach) で、文字通りの風だけでなく、空気、息、霊をも指す多義的な語です。
ここで注目すべきは、「重さを定める」という動詞 עָשָׂה (asah) が能動的な行為を示していることです。
つまり「風が重さを持っている」という観察ではなく、「神がその重さを決めた」という意味合いを持つということです。
当時の自然観と現代科学から見た事実
古代の人々は、風を霊的な存在や神の息と考えていましたが、その物理的な性質までは把握していませんでした。
風に重量があると認識するには、大気圧や空気密度といった科学的概念が必要です。
これは、17世紀、ガリレオの弟子トリチェリが、水銀柱実験を行って初めて証明されました。
そして、空気1立方メートルの質量は、約1.2kg(海面気圧・15℃の場合)です。
この大気は、地表全体に圧力をかけており、1平方センチメートルあたり約1.03kg(約1気圧)の重さがかかっています。
数千年も前に、この「目に見えない重さ」を記すことは、極めて異例なことだと言えます。
ヨブ記28章25節は聖書の啓示性を示す一例
信仰者は、この節を「神が自然界の物理法則を定め、それを人に少しずつ明らかにされる」ことの証と見ます。
そして、風や空気に重さがあるのは、私たちが地球で生きていくため、最適に調整された神の創造の一部だと理解するのです。
一方で批判的な立場の人は、この聖句の「重さ」は、単に「力」や「影響力」の比喩であり、物理的な質量を意味しないと言います。
しかし、詩的表現だとしても、ここまで現代科学と一致する言葉が偶然現れるのは不自然です。
ヨブ記の28章25節は、大気の重さという科学的事実と古代詩の表現が不思議と一致しており、聖書の啓示性を示す一例として受け止められているのです。