聖書とホルモンの働き―第1回 愛と絆・オキシトシンとバソプレシン

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人間が生きる上で、最も深い喜びと安らぎを与えてくれるものは「愛の絆」です。

夫婦の愛、親子の絆、兄弟姉妹のつながり、そして友人同士の信頼関係。これらは単なる心理的な現象にとどまらず、私たちの体そのものに強い影響を与えています。

現代医学は、その背景に「オキシトシン」や「バソプレシン」と呼ばれるホルモンの働きがあることを明らかにしました。

聖書に描かれる「二人は一体となる」

創世記2章24節には、結婚について次のように記されています。

それで人はその父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのである。(創世記2章24節)

これは単なる社会的契約の言葉ではありません。肉体的にも精神的にも、男女が深く結び合うことを示す表現です。

現代の研究では、この「一体感」を支えるのがオキシトシンであることが分かっています。

オキシトシンは「愛情ホルモン」あるいは「絆ホルモン」と呼ばれ、抱擁、授乳、性的交わりなどの場面で分泌され、信頼や安心感を増し、相手との結びつきを強めます。

また、バソプレシンも愛の絆に関わるホルモンとして知られています。

特に男性において、配偶者に対する忠誠心や父性行動を促す働きを持つとされています。

聖書が「夫は妻を愛しなさい」と繰り返し命じている背景には、人間の体そのものにそのような仕組みが備わっていると考えることができるでしょう。

 

キリストと教会の奥義

エペソ人への手紙5章22~25節にはこう書かれています。

妻たる者よ。主に仕えるように自分の夫に仕えなさい。キリストが教会のかしらであって、自らは、からだなる教会の救主であられるように、夫は妻のかしらである。そして教会がキリストに仕えるように、妻もすべてのことにおいて、夫に仕えるべきである。夫たる者よ。キリストが教会を愛してそのためにご自身をささげられたように、妻を愛しなさい。(エペソ人への手紙5章22~25節)

ここでは夫婦の愛が、キリストと教会の関係という霊的な奥義に結びつけられています。

夫婦の結合が単なる肉体的・社会的な契約を超えて、神と人との愛の写しであることが強調されているのです。

現代的に言えば、オキシトシンやバソプレシンがもたらす親密さや忠誠心は、単に「脳内物質の作用」に還元できるものではありません。

むしろ、それらを通して神が人間に「愛の絆を体に刻み込んだ」と理解することができるでしょう。

ホルモンは神が造られた秩序の一部であり、御心を実現する道具なのです。

 

親子の愛とオキシトシン

オキシトシンは出産や授乳の際に特に多く分泌されます。母親が赤ん坊を抱き、母乳を与えるとき、母も子も安心し、強い絆が築かれます。

この働きなしには、赤ん坊は安心して成長することができません。

詩篇131篇2節にはこうあります。

かえって、乳離れしたみどりごが、その母のふところに安らかにあるように、わたしはわが魂を静め、かつ安らかにしました。わが魂は乳離れしたみどりごのように、安らかです。(詩篇131篇2節)

乳離れした子どもが母の懐に抱かれて安らぐ姿は、まさにオキシトシンの働きを思わせます。

人が神に寄り頼む姿を、このように親子の愛で描いたのは、聖書が人間の体と心の深い一致を理解していたからでしょう。

 

愛による一致と人間の癒し

心理学の研究でも、孤独や愛情不足は体の免疫力を低下させ、病気になりやすくすることが分かっています。

逆に、愛されていると感じる人はストレスに強く、回復力も高い。

これはホルモンの作用によって説明できますが、同時に「愛によって人は生きる」という聖書の真理を科学が確認しているとも言えます。

イエスは弟子たちにこのように命じました。

わたしは、新しいいましめをあなたがたに与える、互に愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互に愛し合いなさい。互に愛し合うならば、それによって、あなたがたがわたしの弟子であることを、すべての者が認めるであろう」。(ヨハネによる福音書13章34~35節)

この「互いに愛し合う」関係こそが、オキシトシンの分泌を通して、人間を心身ともに健やかにし、共同体を強く結びつけるのです。

 

信仰と科学の出会い

オキシトシンやバソプレシンは脳の中で分泌されるホルモンですが、私たちが「愛している」「守りたい」「信じたい」と感じるその背後に働いています。

聖書はこれをホルモンという言葉で説明してはいませんが、「一体となる」「愛し合う」「忠実である」と繰り返し教えています。

それは霊的真理であると同時に、肉体的にも具体的な仕組みによって裏づけられているのです。

信仰と科学は対立するものではなく、むしろ補い合う関係です。神が造られた世界は霊と肉が統一されており、愛の力はその中心にあります。

 

結びに

私たちが誰かを心から愛し、また愛されるとき、そこには霊的な喜びとともに肉体的な安らぎが伴います。オキシトシンとバソプレシンはその仕組みを支える神秘的な働きです。

「二人は一体となる」という創世記の言葉は、単に古代の結婚観を語るものではなく、人間の存在そのものが愛によって結びつくよう造られていることを示しています。そしてその愛は、キリストと教会の関係において完成します。

愛と絆――これは神が人に与えられた最大の祝福であり、私たちの心と体を守る最も強力な力なのです。

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