本シリーズでは、人間の精神と肉体に深い影響を与えるホルモンの働きを、聖書の言葉と結びつけて考えてきました。
愛の絆をもたらすオキシトシンやバソプレシン、血を通して命を支えるホルモン、心を癒すセロトニンやドーパミン、恐れを引き起こすアドレナリンやコルチゾール、涙に伴うエンドルフィン、眠りを与えるメラトニン、そして香りと関わるフェロモン…。どれもが、聖書の言葉と響き合うことを見てきました。
最終回となる今回は、ヨハネの第一の手紙に記された「御霊と水と血の一致」を手がかりに、ホルモンと霊的真理の関係を総括してみたいと思います。
御霊と水と血
ヨハネの第一の手紙5章6~8節にはこうあります。
このイエス・キリストは、水と血とをとおってこられたかたである。水によるだけではなく、水と血とによってこられたのである。そのあかしをするものは、御霊である。御霊は真理だからである。あかしをするものが、三つある。御霊と水と血とである。そして、この三つのものは一致する。
ここで語られている「御霊・水・血の一致」は、イエス・キリストの真実を証しする根拠として挙げられています。
霊的次元と肉体的次元とが、分かちがたく結びついていることを示しています。
血―命を運ぶ媒体
血は肉体を生かす媒体です。酸素や栄養を運び、老廃物を取り除き、免疫を支え、そしてホルモンを全身に届けます。
「血は命」(レビ記17章11節)という言葉は、まさにこの事実を先取りしていました。
ホルモンは血流に乗って全身を巡り、心や感情、体の働きを統合します。
恐れや喜び、眠りや安らぎ、涙や愛の絆…。そのすべては、血液を通じて運ばれるホルモンによって調整されているのです。
水―命の流れと浄化
水は命を支える根本的な要素です。人の体の大半は水であり、血液もまた水を主成分としています。
水は血と共にホルモンを運び、体の調和を守る働きをします。また水は浄化の象徴でもあります。
聖書における洗礼もまた「水による浄め」を意味します。水は人の体を清めると同時に、霊的な再生を象徴しているのです。
御霊―命を導く力
そして御霊です。御霊は見えませんが、人の心を動かし、神と人とを結びつける力です。
聖書は御霊を「助け主」「慰め主」と呼び、人を真理へと導く存在として示しています。
この御霊の働きは目に見えませんが、確かに人を変える力を持っています。ちょうど、ホルモンが目には見えないけれど、体と心に確かな影響を及ぼすように。
三つの一致とホルモンの神秘
御霊・水・血――この三つの一致は、人間存在の全体性を示すものです。
霊的次元と肉体的次元は分離できず、互いに影響し合いながら人間を生かしています。
ホルモンは「血と水」を媒体として全身に作用します。その働きが人の心を左右し、霊的生活にも影響を与えるのです。
そして御霊は、その全体を導き、調和させる存在として働きます。
つまり、ホルモンの働きそのものが「御霊・水・血の一致」の一端を映し出していると言えるのです。
神が造られた調和の設計
人間の体は、驚くほど精妙に設計されています。ホルモンが少なすぎても多すぎても体は病に陥ります。適切なバランスの中でのみ、心と体は健康を保つことができます。
信仰生活においても同じです。御霊による導きと、水と血に象徴される肉体の調和が保たれるとき、人は真に健やかに生きることができます。神は人間を、霊と肉の調和の中に造られたのです。
結びに
「御霊と水と血の一致」という聖書の言葉は、単なる神学的な概念ではなく、私たちの存在のリアリティを示しています。
ホルモンは血と水を介して心身を整え、御霊はその全体を導き、神に結びつけます。
また、「御霊と水と血の一致」という真理には、性ホルモンの働きも含まれています。
男と女が互いを補い合い、命をつなぐことは、神の御霊が働く場でもあります。
テストステロンとエストロゲンのバランスは、霊的に言えば「一致」の象徴ともいえるでしょう。
本シリーズを通じて見てきたように、聖書の言葉と現代科学の知見は、互いに補い合い、人間の深い真理を照らし出します。
人は霊的にも肉体的にも、神の愛と秩序の中に生かされているのです。
「この三つのものは一致する」――このみ言は、霊と肉を一つに造られた神の設計を証しするものです。そしてその調和の中で、人は真の命に導かれるのです。

