聖書とホルモンの働き―第3回 喜びと癒し・セロトニンとドーパミン

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前回までは「愛と絆をもたらすホルモン」や「男女の性差を形づくるホルモン」について考えました。

神が愛と性を通して人間を結び合わせ、命を継がせる仕組みを備えられたことを確認しました。今回はその流れを受けて、「心の喜び」が体を癒す力になるという視点を深めたいと思います。

人は誰しも「喜びたい」と願い、「癒されたい」と求めています。聖書は古代から、人間の心と体が深く結びついていることを繰り返し語ってきました。

現代科学はその裏側に「ホルモン」という仕組みが働いていることを明らかにしました。特にセロトニンとドーパミンという二つの神経伝達物質は、心の喜びと体の健康に深く関わっています。

 

喜びは良い薬

箴言17章22節にはこう書かれています。

 心の楽しみは良い薬である。たましいの憂いは骨を枯らす。(箴言17章22節)

この言葉は、人間の精神状態が体の健康に直接作用することを直感的に示しています。

現代医学的に言えば、心が明るく穏やかなときにはセロトニンやドーパミンが分泌され、免疫力が高まり、心身が健やかに保たれます。

逆に心が沈んで憂いに満たされると、ストレスホルモンが優位になり、体が弱っていきます。

つまり、聖書の知恵は「笑顔と喜びは体を癒す」という事実をすでに語っていたのです。

 

セロトニン ― 安らぎをもたらす「幸せホルモン」

セロトニンは、脳や腸で分泌される神経伝達物質で、「幸せホルモン」とも呼ばれます。

気分を安定させ、不安や怒りを和らげ、心に穏やかさをもたらします。

また、体内時計や睡眠リズムの調整にも関与しており、日々の生活リズムを守る要です。

祈りや瞑想、朝の太陽の光を浴びること、感謝の習慣などは、セロトニン分泌を促すことが知られています。

イエスが「あすのことを思いわずらうな」(マタイ福音書6章34節)と教えられたのも、心を落ち着かせることの大切さを示していると言えるでしょう。

 

ドーパミン ― 喜びと動機づけを生む「報酬ホルモン」

一方、ドーパミンは「快楽ホルモン」と呼ばれ、報酬や達成感を得たときに分泌されます。

小さな成功体験でもドーパミンは放出され、人を次の行動へと駆り立てます。学びや働きに意欲を持つことは、心を前に進ませる力となります。

箴言13章4節にはこうあります。

 なまけ者の心は、願い求めても、何も得ない、しかし勤め働く者の心は豊かに満たされる。(箴言13章4節)

勤勉に働く人は心が満たされるのは、単に収穫や報酬があるからではなく、努力と成果がドーパミンを分泌させ、心を豊かにするからだとも言えるでしょう。

 

聖書における「喜びなさい」の命令

新約聖書では、喜びが信仰生活の核心として繰り返し強調されています。

 いつも喜んでいなさい。(テサロニケⅠ5章16節)

これは単なる精神論ではなく、実際に人間の体と心を守るための知恵です。

喜びがセロトニンとドーパミンを分泌させ、心を強め、体を健やかにする。神は人間の設計にその仕組みを組み込まれていたのです。

この喜びは、一人だけで完結するものではありません。共同体の中で分かち合われるとき、より強く、より深く私たちを癒してくれます。

使徒行伝2章46~47節には、初代教会の人々の姿がこう描かれています。

 そして日々心を一つにして、絶えず宮もうでをなし、家ではパンをさき、よろこびと、まごころとをもって、食事を共にし、神をさんびし、すべての人に好意を持たれていた。そして主は、救われる者を日々仲間に加えて下さったのである。(使徒行伝2章46~47節)

共同体での交わりや感謝の食卓は、心を温め、セロトニンを増やす効果があると現代の研究でも分かっています。

人が一人ではなく共に喜び合うことは、神が人間に与えられた生理的・霊的な癒しの仕組みなのです。

 

喜びは選択することができる

聖書はしばしば「喜びなさい」と命じますが、これは、喜びが単なる感情の結果ではなく、意志的な選択でもあることを意味します。

感謝を探し、賛美を選び、喜びを心に迎え入れるとき、私たちの体は応答し、癒しの方向へと動き始めます。

ピリピ人への手紙4章4節にはこう記されています。

 あなたがたは、主にあっていつも喜びなさい。繰り返して言うが、喜びなさい。(ピリピ人への手紙4章4節)

パウロは牢獄の中からこの言葉を記しました。状況にかかわらず「喜びを選ぶ」ことは可能であり、その選択が人間の心と体を支え続けるのです。

 

結びに

セロトニンとドーパミン――これらは科学的に発見された「喜びと癒しの鍵」です。しかし聖書はすでに、「心の楽しみは良い薬である」と語っていました。

私たちが信仰によって「感謝し、賛美し、喜ぶ」とき、霊的に神に近づくだけでなく、肉体もまたホルモンの働きによって癒されていきます。

信仰と科学はここで深く出会い、互いを照らし出しているのです。喜びは霊と肉を結ぶ架け橋。神が人に与えられた最高の薬です。

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