1.はじめに─量子もつれは世界の深層構造を暴く現象である
量子論の中でもっとも直観に反し、人間の理解を超えているとされる現象が「量子もつれ」です。
アインシュタインでさえ、これを「不気味な遠隔作用」と呼びました。
二つの量子が一度相互作用をもつと、どれほど離れていても、一方の状態が定まると他方の状態も対応して定まるという現象は、私たちが日常世界で経験する物理的距離や時間の感覚では説明できません。
私たちが日常的に経験している物理世界では、原因と結果は、空間の中を距離と時間をかけて伝わっていくものとして理解されています。
このような、地上界(物質世界)の内部で、距離と時間を介して横方向に広がっていく因果関係を、ここでは「横の関係」と呼ぶことにします。
古典物理学は、この「横の関係」、すなわち距離が離れるほど影響は弱まり、作用は時間をかけて伝わるという前提の上に築かれてきました。
しかし、量子もつれの現象は、この前提では説明することができません。
つまり、古典物理学は距離によって影響が弱まるという「横の関係」を前提としてきましたが、量子もつれは、その前提そのものを揺さぶる現象なのです。
この不思議な現象は、世界が霊界・量子層・地上界という三層構造によって成り立つという視点に立つとき、新たな意味をもって理解されます。
本稿では、量子もつれを「縦の関係」の現れとして捉え直し、霊界の構造との相似性を明らかにします。
2.非局所性─距離に依存しない相関が示すもの
量子もつれの最も重要な特徴は非局所性です。二つの粒子がもつれている状態では、片方を測定すると、もう片方がどれほど離れていても、それに対応した状態が現れます。
これは距離に依存しない相関が現れるという性質を意味しており、光速度という宇宙の最大速度を前提とした、通常の物理的直観では説明しにくい振る舞いです。
私たちがいる地上界では、因果律は光速度に従い、情報は光より速く伝達されません。
しかし、量子もつれは、そのような古典的な枠組みでは説明できない振る舞いを示します。
非局所的相関は、物質が本質的に地上界の枠組みとは異なる次元の影響を受けていることを示しており、霊界と量子層のつながりを理解する鍵となります。
3.「縦の関係」とは何か
これまで見てきたように、地上界の物理世界では、原因と結果は距離と時間を介して伝わる「横の関係」によって結びついています。
しかし、世界が霊界・量子層・地上界という三層構造を持つと考えるなら、そこにはもう一つの関係の軸、すなわち異なる次元同士を貫いて働く「縦の関係」が存在すると考えることができます。
「縦の関係」とは、地上界の空間を横に移動して作用が伝わるのではなく、階層の異なる世界を上下に貫いて働く関係のことです。
そこでは、距離や位置といった地上界の条件は、本質的な制約になりません。「横の関係」が「同じ世界の内部での因果関係」であるのに対し、「縦の関係」は「異なる次元をまたいで働く関係」と言うことができます。
4.なぜ「横の関係」だけでは量子もつれの現象を説明できないのか
地上界の物理法則は、原因と結果が距離と時間をかけて伝わっていくという「横の関係」を前提としています。
距離が離れれば影響は弱まり、相互作用には何らかの媒介が必要になる、というのが基本的な考え方です。
しかし、量子もつれの現象では、二つの粒子がどれほど離れていても、一方の状態が定まると他方の状態も対応して定まるという、距離に依存しない相関が現れます。
この現象は、地上界の「横の関係」だけを前提とする枠組みでは、どうしても説明がつきません。
もし世界が地上界の横方向のつながりだけで構成されているのなら、このような振る舞いは原理的に起こり得ないはずだからです。
5.量子もつれは「縦の関係」として理解できる
しかし、世界が三層構造を持ち、地上界の背後に、距離や位置といった制約を受けない上位の次元が存在すると考えるなら、量子もつれの現象はまったく違った姿を見せてきます。
二つの粒子は、地上界の空間を通して横につながっているのではなく、量子層や霊界という縦方向の次元を介して結びついている、と考えることができるのです。
その場合、地上界における距離は本質的な意味を持たず、距離に依存しない相関が現れることも、構造的には十分に理解可能になります。
量子もつれとは、地上界の横の因果関係の枠を超えて、「縦の関係」が物理現象の中に表れる一つの徴候と見ることができるのです。
6.霊界は「縦方向の次元」である
聖書は、霊界を地上の空間的距離や時間の流れに支配されない領域として描いています。
「千年は一日のようである」(ペテロの第二の手紙3:8)、「わたしは天と地とに満ちているではないか」(エレミヤ23:24)といった言葉は、霊的領域が地上界の時間や空間の制約を超えた次元であることを示唆しています。
この意味で、霊界は地上界と横に連なって広がる世界ではなく、階層の異なる「縦方向の次元」として存在していると理解することができます。
もしそのような次元が実在するなら、量子もつれのような現象が、地上界の距離概念に縛られずに現れることも、世界の構造として無理なく位置づけることができます。
7.結─量子もつれは「縦の関係」を象徴する現象
量子もつれは、地上の物理的距離を超えて働く「縦の関係」を象徴する現象です。
地上世界の横方向の因果では説明できない非局所性は、霊界の非時間的・非局所的次元が存在することを示唆しており、量子もつれはこの霊界の特徴が物質世界に反映されたものと理解できます。
霊界と地上界をつなぐ中間層として量子層が存在するからこそ、二つの粒子は地上界の「横の関係」を経由することなく、距離に依存しない相関を示すことができるのです。
この視点は、創世記の光による分離と、霊と物質の二重構造を統合的に理解する鍵となります。
次回の第7回では、この「縦の関係」が祈りや霊的交わりとどのように関係するのか、霊界と量子層が人間の心にどのように作用するのかについて掘り下げていきます。

