創世記と量子論の統合宇宙論Ⅱ―第1回 四つの力の最大の謎:なぜ重力だけ特別なのか

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1.宇宙を支配する四つの力

宇宙を成り立たせている基本的な力は、現代物理学において四つに整理されています。すなわち、重力、電磁気力、強い力、弱い力です。

これらは、自然界で起こるあらゆる現象を、最終的に説明するための基礎的相互作用として位置づけられています。

一見すると、これら四つの力は同列に並べられる存在のように見えますが、注意深く見ていくと、重力だけが他の三つとは明らかに異なる性質と役割を持っていることが分かります。

 

2.電磁気力・強い力・弱い力の性質と役割

電磁気力は、電荷をもつ粒子の間に働く力であり、原子や分子の構造、化学反応、さらには光や電気といった現象を支配しています。

私たちが日常生活の中で直接経験している物理的な働きの多くは、この電磁気力に由来しています。

重要なのは、電磁気力が「電荷」という、物質がもつ固有の性質に結びついて働く力であるという点です。電荷をもたない存在には、電磁気力は作用しません。

強い力は、原子核の内部で働き、陽子や中性子を結びつけることによって原子核を安定させています。

この力は「色荷」と呼ばれる、量子色力学に特有の性質に基づいて作用する力であり、色荷をもつ粒子の間でのみ働きます。

その作用範囲はきわめて短いものの、自然界で最も強い相互作用です。

弱い力は、素粒子の種類を変化させる相互作用であり、放射性崩壊や恒星内部の核反応などに関与しています。

この力もまた、「弱荷」と呼ばれる物質固有の性質に結びついており、特定の粒子に対してのみ作用します。このように、電磁気力、強い力、弱い力には共通点があります。

それはいずれも、電荷、色荷、弱荷といった物質固有の性質を前提として働く力であり、物質の内部構造や変化のあり方を規定する相互作用であるという点です。

これら三つの力は、場の量子論という共通の枠組みの中で統一的に記述され、理論と実験の一致も高い精度で確認されています。

 

3.重力の際立った異質性

これに対して、重力はまったく異なる位置にあります。

重力は電荷や色荷、弱荷といった物質固有の性質を必要とせず、質量やエネルギーをもつすべての存在に例外なく作用します。

しかも、その強さは他の三つの力と比べて、桁違いに弱いのです。たとえば、二つの電子の間に働く電磁気力と重力を比べると、その差はおよそ10の36乗倍にもなります。

この重力の弱さを直感的に理解するために、身近なたとえを考えてみましょう。

小さな磁石一つで、机の上のクリップを簡単に持ち上げることができます。

このとき、磁石は地球全体が及ぼしている重力に逆らって、金属片を引き上げています。

地球という天文学的な質量が生み出す重力よりも、手のひらに乗るほどの磁石が生み出す電磁気的な力のほうが、局所的にははるかに強く働いているのです。

この事実は、重力がどれほど弱い力であるかを感覚的に示しています。

 

4.極端に弱いのに宇宙を支配する重力

ところが、この極端に弱い重力が、宇宙全体の構造を支配しているという事実があります。

電磁気力には正と負があり、大きなスケールでは互いに打ち消し合いやすく、強い力や弱い力は作用する距離が非常に短いため、天体規模の構造を直接規定することはできません。

それに対して重力は、常に引き寄せる方向にのみ働き、質量やエネルギーをもつすべての存在に作用します。

その結果、個々の粒子レベルでは、無視できるほど弱いにもかかわらず、膨大な数の粒子が集まった宇宙スケールでは、他のすべての力を圧倒する支配力を持つことになります。

 

5.重力だけが量子化できないという問題

重力の異質性は、理論的な側面にも表れています。電磁気力、強い力、弱い力は、いずれも量子論の枠組みで説明することができますが、重力だけは量子論の枠組みではうまく説明することができません。

重力を、他の力と同じように量子論で扱える形にしようとすると、計算が無限大に発散し、理論として成立しなくなるため、重力はいまだに一般相対論という、量子論以前の理論によって扱われています。

この結果、現代物理学は、ミクロの世界を量子論で説明し、マクロな時空構造を相対論で説明するという、完全には統合されていない状態に置かれています。

 

6.重力の問題は世界観の問題

ここまで見てくると、重力の問題は単なる「力の強さ」や「理論の未完成」という次元を超え、世界をどのような階層構造として理解するかという根本的な世界観の問題に関わっていることが分かります。

もし重力が、物質固有の性質に結びついた相互作用ではなく、世界そのものの舞台を成立させ、存在を成り立たせるための力であるとするならば、その弱さや量子化の困難さは、欠陥ではなく必然として理解できる可能性があります。

本シリーズでは、この視点を出発点として、重力の特異性を単なる例外や未解決問題としてではなく、世界の構造を理解するための鍵として捉え直していきます。

次回は、宇宙の初期において力がどのように統一され、どのように分離していったのかという問題を取り上げ、なぜ最初に重力が分かれたと考えられているのかを検討します。

その考察を通して、重力という力が担っている本質的な役割が、より明確に浮かび上がってくるはずです。

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