1. はじめに:進化論の中心メカニズムは本当に「創造」を説明できるのか
進化論の根幹を支える要素は、突然変異と自然選択の二つです。
突然変異が生命の遺伝情報に偶然の変化をもたらし、その中で環境に適応したものが自然選択によって生き残り、長い時間の中で複雑な器官や新しい種が誕生したと説明されます。
しかし、このメカニズムが生命の高度な情報体系や、統合された生物機能を生み出し得るかという問いに正面から向き合うと、進化論の根本的な破綻が浮かび上がってきます。
本記事では、突然変異と自然選択のメカニズムが人間の言語能力、生命の情報構造、そして高度な器官の発生を説明できない理由について説明します。
2. 突然変異は情報を生み出さない―破壊と劣化が蓄積しても新しい意味は生まれない
突然変異とは、DNAの配列に偶発的な変化が生じる現象です。放射線、化学物質、複製ミスなど、さまざまな要因で起こりますが、その本質は「情報の損傷」あるいは「誤り」です。
現代の分子生物学が明らかにしたのは、突然変異の大部分が有害か中立であり、新しい器官や複雑な機能を生み出す働きはほとんどないという事実です。
破損したファイルをコピーし続けても、精度の高い文書が生まれないように、誤りの積み重ねは情報の欠損につながります。
ここで言語存在論の視点が重要になります。
情報とは意味を持つ体系であり、偶然の変化から意味ある文脈が生じることはありません。
文章の文字をランダムに置き換えても、物語が生まれることがないのと同じように、突然変異が意味のある遺伝情報を生み出すことは不可能です。
つまり、進化論の前提である「突然変異→新しい情報」という理解そのものが、情報論の観点から破綻しています。
3. 自然選択は“選ぶ”だけで“創る”ことはできない―自然選択は創造の代役にならない
自然選択は、生物が環境に適応する過程を説明する概念であり、有益な変化があれば、それを残す働きをします。
しかし、ここで根本的な誤解があります。それは自然選択が“新しい機能を生み出す”と理解されがちなことです。
自然選択は、あくまで既に存在するものから“選び取る”働きにすぎません。自然選択そのものには、情報を創出する作用がないのです。
どれほど優れた選択機能を持っていても、素材そのもの――つまり“新しい情報体系”――が生まれなければ、複雑な器官は決して形成されません。
この点で自然選択は、創造主が持つ「意味と意図による創造」とは根本的に異なります。
意図のない選択に創造力はなく、無意味な情報から有意味な体系は生まれません。
4. 機能の“部分”ではなく“統合”が必要―偶然では複合的機能は成立しない
生物の器官は、単純な構造の積み重ねではなく、複数の要素が同時に、しかも統合的に働くことで成立しています。
目を例にあげれば、光を受け取る細胞だけでは視覚は生まれません。
レンズ、角膜、網膜、視神経、大脳皮質といった複数の器官が連動し、さらに光の処理を行う複雑な情報システムが、同時に整わなければ視覚は成立しません。
突然変異と自然選択を組み合わせても、こうした統合的システムが段階的に形成されることを説明できないのです。
特定の一部が偶然に変化しても、統合が崩れれば、機能はむしろ損なわれ、適応から遠ざかります。ここに進化論の根本的限界があります。
偶然の変化によって統合的システムが形成される確率は、生命の起源と同様に、ほぼゼロなのです。
5. 言語能力は突然変異では説明できない―言語存在論が暴く進化論の盲点
言語存在論の観点から、自然選択と突然変異の限界はさらに明らかになります。
人間の言語能力は、生存に直接関わらない高度な抽象思考、意味形成、意図伝達の能力を前提としています。
動物には存在しない文法の構造やメタ認知の働き、論理的推論などは、どれも一度に複数の脳領域が協力して機能する、極めて複雑な体系です。
突然変異は、こうした高度な統合システムを生み出すことができません。さらに、自然選択は意図を持たないため、言語能力のような“非物質的で高度な意味体系”が、進化の過程で優先される理由も存在しません。
言語は情報の中の情報であり、意味の中の意味です。偶然の積み重ねでこうした階層的能力が生まれることは不可能です。
言語能力の存在そのものが、進化論の想定する「偶然の世界観」では説明できない最大の証拠なのです。
6. 自然選択と突然変異では“新しい種”は生まれない―種の境界は意図的に設計されている
突然変異と自然選択によって、ある種が別の種へと変わる例は確認されていません。
細菌の耐性獲得や鳥のくちばしの長さの変化など、環境への適応例は多数ありますが、それらはすべて既存の遺伝情報の発現が変動したにすぎません。
種の壁を越える変化――たとえば爬虫類から鳥類へ、猿から人間へ――といった劇的な変化は観察されたことがなく、化石記録にもその連続性は存在しません。
これは、遺伝情報に最初から意図的な境界が設定されているためです。
生命は“変動可能性”と同時に“変動不可能性”をもつように設計されており、それが種の安定性を保証しています。
このような精巧な構造は、偶然の変化からではなく、創造主による目的的設計によってのみ説明できるものです。
7. 結論:偶然では創造の代わりにはならない
突然変異は、情報を破壊する側面が強く、新しい意味体系を生み出すことはできません。
自然選択は、現存する情報から有利なものを取り出す働きにとどまり、創造力を持ちません。
そして、複雑な器官や言語能力のような高度な統合システムは、偶然の変化と選択の組み合わせでは、決して成立しません。
生命の構造、情報の本質、言語の存在、そして種の安定性は、偶然の積み重ねではなく、ロゴス(言)をもつ創造主による意図的設計を必然的に示しています。
自然選択と突然変異は、生命の本質に迫るどころか、その複雑さと意味の深さを説明するにはあまりに不十分です。
“偶然の進化”という物語を否定し、創造主による目的的創造を認める方が、生命の現実に圧倒的に整合しています。

