目次
第１章 「心身統一」とその必要性
（１）「心身統一」訓練の前提となること
（２）なぜ心と体の統一が必要なのか
（３）沈黙に耳を傾けることでなぜ沈黙が破れるのか
第２章 「思いの列車」から統一主義へ向かう道
（１）「思いの列車」から降りて「今」に生きる
（２）心の麻酔薬依存からの解放
（３）私と私自身-分離主義から統一主義へ（←本記事の内容）
（４）真の姿になる道-「心身統一」訓練
第３章 「心身統一」訓練
（１）心身の分裂状態を知るゲーム
（２）訓練を始める前に
①環境
②姿勢
1）座る場所
2）足
3）手
4）背中
5）頭
6）目
7）口
8）精誠の「誠」
③呼吸
④修練時間
（３）「心身統一」訓練の準備と始めの祈祷
（４）「心身統一」訓練
①８つの予備段階訓練
②省察
③訓練
④献身
⑤結論：個人的段階
第４章 夫婦の和合
（１）自分の変化が他者の変化を誘導
（２）「思いの列車」に命名する
（３）幸福に連結する「相手の立場で考える」訓練
（４）まず共感して聞くこと
（５）貞節
（６）すぐに反応しないで聞き入ること
（７）夫婦合同の傾聴訓練
①葛藤の分かち合い
②お互いの力になってあげる
③相手の立場で読む
④相手の感情を受け入れる
⑤葛藤を認める
⑥感謝の祈祷
⑦瞑想と沈黙
第５章 子女との和合
（１）子女たちへの二つの徳目
（２）一人一人に個人的関心をもつ
（３）宝のような子女たち
（４）子どもたちと一緒にいるときの霊的訓練
最後に－常に完全でいることはできない
※本記事は、『天和堂－心身統一と家庭和合の修練』（文亨進著）を改訳し、抜粋して再編集したものです。
第２章 「思いの列車」から統一主義へ向かう道
（３）私と私自身-分離主義から統一主義へ
人生において私たちは、心が満たされずに挫折し、悩み苦しむことがあります。その時に、もし利己的であったり、自分中心的な認識を持っていたりすれば、自分と他人を区別するようになります。そして、自分と対立する大勢の他人がいるので、自分にとっては不利なゲームになっていると考えるようになります。自分と他人を徹底して分離することによって、より多くの保護幕で自分を防御し、より多くの慢心と利己的自我で武装する必要性を感じるようになるのです。
そして、世の中の人たちと常に争い、緊張関係の中で生きつづけるようになるので、「彼らは皆、私の足を引っ張ろうとして、いつも私と争っている。彼らは私を嫉妬している」と考えるようになるのです。
ここで他人と自分の間に大きな隔たりを置けば置くほど、私たちが共通の人間性を持っていることを忘れるようになります。つまり私たちは神様の子女であり、内面に本心と純粋で利他的な心があることを忘れるようになるのです。
あらゆるものが私から根本的に分離されると、彼らを傷つけることができ、彼らの上に君臨するようになり、彼らを搾取して瞬間的な喜びのために利用するようになります。そして、最悪の場合、彼らを殺害することまでもできてしまうのです。また、心の中で他人を自分の人生から徹底して排除させ、人を憎んだり恨みを持つことや、自分が抱えている問題に対して相手を非難することを正当化したり、合理化したりすることができるのです。これは統一主義者に反する分離主義者です。
それでは、どこから堕落性本性、すなわち憎しみ、嫉妬、ねたみ、怒りなどが起こってくるのかを考えてみましょう。他人と自分を完全に分離させるとき、彼らと破壊的な競争関係におかれるようになります。そして、利己的な自我をより多く保護しなければならないので、「周囲に要塞を築かなければならない、世界が侵入しようとするのでより高い壁とより多くの障害物を築かなければならない」と考えるようになり、絶えずそれを繰り返すのです。誰かが私より多くもてば、嫉妬心に包まれるようになります。本能的に出会う人たちを自分より「劣等だ」、「ある程度同じだ」、「優秀だ」と審判するようになります。人々を区分し、心の中で階層化させるのです。
ある人に対して、「私より劣等だ」と判断すれば喜悦を感じ、慢心と驕慢がもぞもぞと入り込んできます。また、「自分と多少似ている」と判断すれば、即座に強烈な競争意識に囚われるようになります。また、「私より優秀だ」と判断すれば、それは最も気分の悪いケースとなり、自信が弱まって彼らが持つものに対して嫉妬とねたみがわき、自分にないものを彼らが持っている事実に対して怒りを覚え、憎しみが芽生えるのです。このような慢心、競争心、憎しみ、怒りなどを持つのですが、これらは自分中心的で利己的自我で満たされたものであり、人と対立する自分を認識するところから起こってくるものです。
神学的に言えば、これがまさにアダムとエバの堕落の原因になったものです。天使長ルーシェルは、アダムに対して嫉妬と怒りを感じたとき、最初の分離主義者になりました。ルーシェルは、神様の愛と愛情をめぐって、アダムとエバを競争相手と見たのです。
彼は、神様から分離されたことを感じました。神様が彼を天使として愛していらっしゃることを忘れたのです。そして彼は、アダムが持っているものを持ちたいと思う強烈な欲望を感じました。彼は自己中心的な思いでいっぱいになり、あらゆるものが彼と対立するようになりました。背信感を抱き、選択の余地がないという限定された感情を持つようになったのです。「誰がこのあらゆることの原因を提供したのか。それはアダムとエバ（ほかの人）だ。アダムとエバの過ちだ。彼らが嫉妬するように、ねたむように、貪欲になるように強要したのだ」とルーシェルは自分の思いを合理化させたのです。
不幸にも、これは現在、私たち自身の生活とそれほど違いません。多くの場合、私たちもこれと同じ考え方をしています。これは慢心に満ちた見解から来るもので、ほかの人たちとの関係を断絶し、完全に分離させることから始まるのです。このような意識は、それ自体が人を傷つけ、恨むことを正当化させるのです。これは、私たちが一つの家族として相互連結していることを認める統一主義に反する分離主義なのです。
私たちは、自分と他人を別個の二つの存在とみる分離主義者的な行為をしていないと仮定してみましょう！ 実際にほかの人の中に私たち自身を見たと考えてみましょう！ あらゆるものをただ一つの存在として見つめるのです。二つに見るのではなく、一つであると同時に二つ、すなわち一つのものとして見るのです。自分の独特さを認めると同時に、人間としての類似性を理解し､私たち全員が一つだということを理解しなければなりません。
もしそのように考えることができれば、他人を完全に尊重できるようになり、私たちと同じ個体として、当然受けるべき尊厳性を彼らにも付与できるようになるのです。神様の下の一つの家族である私たちは、分離主義ではなく統一主義を修練しているのです。彼らと私たち自身を二つに分けなければ、彼らの成功に対して本当に喜び、同じ心で喜ぶことができるはずです。
しかし、実際には、無知で自分に対する考えでいっぱいになっているので、他人と自分を区分し、幸福そうにしている人たちを嫉妬し、ねたみ、恨んだりもします。また、自分たちが持つ自己中心的見解を彼らに投射し、「彼らもやはり私たちと同じ考えをしているだろう」と推測し、彼らを利己的で自分のことばかり考える人たちと見なすこともあります。
しかし、もし私たち全員が相互に連結されていて、互いの運命の一部だという事実を理解できれば、すなわち私たち全員が神様の子女として、一つの家族として和合すべきだということを理解するときには、成功した人に対して心からの祝賀を送ることができるのです。
自分と他人を根本的に分離する分離主義者ではないので、私たちが彼らとライバル、または競争関係になることはありません。彼らの中に私たち自身を見ることができるので、彼らの幸福を通して、私たちも幸福を感じることができ、彼らの成功を通して喜びを味わうことができるのです。子女の成功を見て、私たちは喜びを感じるでしょう。しかし、嫉妬したり憎んだりしている人たちの大きな成功を、私たちはどのように感じるでしょうか。他人を自分から分離して敵だとまで誇張する、そのような自らが広げたわなを避けなければなりません。
そのようになれば、世の中はこれ以上、私たちと対立することはなく、私たちの足首をつかむこともなく、かえって私たちのために、私たちと共に働くようになるのです。私たちは、人が良い職業についたり、良い点数をもらって大会で１等になったりすることなどを見て、喜びを感じるようになります。彼らと共に、彼らを通して私たちは幸福を感じることができます。すべての人間が苦難ではなく永遠の幸福を求めようとする（原理の出発点でもある）、共通の人間性から自分自身を分離さえしなければ、人が感じる喜悦を自分も経験するようになり、心の中からわき出る親密さと真実の心で彼らと共に喜ぶことができるのです。
私自身が幸福（一時的で、簡単に消えてしまう快楽ではなく、持続的な幸福と喜悦）を求めていることを、そして他の個々の存在も、さらには神様までも共に分かち合える幸福を求めていることを認知するときに、初めて私たちは、共通の宇宙的な努力を傾けていることを知ることができます。私たちは、人種や国籍、または外貌などに関係なく、互いが互いに似ていることを目撃するようになるのです。
しかし、もし自分を他人と分離させ、自己中心的な意識を持てば、私たちの動機は、すぐに他人ではなく自分だけのための幸福に変わっていきます。私たちが自己中心的ではない統一主義、すなわち利他的なものを修練すれば、そして、すべての人たちが幸福を願っていることを知れば、私たちは、何の条件もなく人を完全に尊敬できるようになります。私たちは、彼らが経験した逆境や成功に心から共感できるのです。ここで私たちは、真の父母の愛を経験するようになります。このような世の中やその活動というものは、現在のものとはまったく異なるものでしょう。
自らを修練し、自分の弱さと否定的な領域をもう少し正確に見ることができるようになれば、障害を克服できる力を得るようになります。
例えば、皆さんがあることに満足し、喜ぶ状況で、人々が集まってひそひそと話し、自分をあざ笑っているのを見たと仮定してみましょう。すぐに幸福な気分が消え、防御心理がわき上がってくるでしょう。その瞬間、皆さんのわずかな欠点と不安定さを見た人たちに対する憎しみと恐怖で心がいっぱいになるでしょう。
しかし、このように反応するのではなく、彼らもやはり私と同じことで苦労していることを自らに思い起こさせながら、「苦痛ではなく、喜びの心をいつも維持することを願います。自分にはもちろん、人にも平安な心で親切にすることを願います」と祈って同情的に対応すればどうなるでしょうか。
私は、個人的に誰かから審判され、批判されていると感じるとき、このように祈ります。慈悲と同情を施したとき、私は防御的になるのではなく、復讐心が心の中でおさまっていく自分を発見しました。私を批判する人のためにそのような祈りを捧げたとき、私には怒りと憎しみという「思いの列車」ではなく、内的な落ち着きと平和の感情が訪れてきました。
不幸にも、怒り、憎しみのような煩わしい感情は、利己的な自我を育てます。人に向かって怒ったり、審判的な行為をしたりするとき、私たちは、すぐに自分と相手を二つに分けます。私たちは被害者であり、相手は加害者だと考えるのです。そうして相手から自分を分離させます。相手は非難されて当然であり、私たち自身はまったくの潔白だと考えます。もちろん、極悪非道な過ちを行っている人がいれば、早く止めなければなりません。しかし、それは怒りと復讐心からではなく、相手のための専門家的な気質と同情心の発露でなければなりません。
よく自信と利己主義が混同されます。これはとても深刻な失敗ですが、やはり私も過去にはこのような失敗を犯しました。私が思うには、思い切り胸を張って歩く人たちは、最も臆病で不安定な人たちです。彼らは、ほかの人たちを自分より劣等と区分して自らを誇らしく思ったり、時には、自分より優れている範疇の中では、彼らに対する嫉妬、ねたみ、怒り、憎しみなどを、自分の驕慢と慢心という仮面の中に隠したりもします。彼らは、彼らのイメージを継続して維持するために、人から認められようとし、不幸にも自らを強化させるために人を利用したりもします。
したがって彼らは、いつも仮装した人生を生きています。神様と彼ら自身と世の中の前に、いつも偽りの自分の姿を支えなければなりません。もしそれが崩れれば、精神的栄養失調で無気力になった彼ら自身の姿がはっきりと現れるからです。霊的ステロイドが注入された筋肉の後ろに隠れた、弱々しく悲惨な精神と体を持つ臆病者だという事実が現れるからです。（私もまた人生のある時期にはそれと同じでした。）
健康について話をするとき、肉身の健康だけを語ることはできません。私たちが肉体的なステロイドを服用してはいけないように、精神的なステロイドもまた同様です。そのステロイドは、私たちを大きく、強く、力があるように見せ、しばらくの間、柔軟で壮健な筋肉をつくってくれるかもしれませんが、その気運がすっかりなくなれば、薬の副作用によって心臓と肺が傷つき、呼吸器と循環器が傷つくなどして体が壊れてしまうのです。霊的な場合もこれと同じです。（残念ながら、霊的な道でも、これと同じようなわながたくさんあるのでこのような例を挙げています。）
「自分はそのような類いの人間ではない」と否定するかもしれません。しかし、私の見解では、少なくとも自らを正確に見ることができなければならず、そうすれば、霊的にこれと似た毒性の物質をどれほどたくさん服用しているかを知ることができます。
私たちは、秘密裏に勝敗の対象をつくって具体化させる自我に対して、中毒者であり耽溺（たんでき）者です。私たちにとっては、とても苦痛で不快なことですが、このような事実を知って認めるとき、本当の修練が始まるようになります。問題があることを知ってこそ、それを直すことができる力を持つようになるのです。
しかし、ただ単純に「さあ、私はもうそれを認めるくらい強い！ 私は臆病者ではない」と言う（認めた）だけで、自分の変化のための努力を怠っていてはいけません。問題を認めただけで、それを直していかないのは、単純に自分に正直であるかのように装っているにすぎません。
心から自分に正直な人は、問題を認めるだけでなく、それに積極的に関与し、より正しく直していく人です。自分の問題を認めるのは最初の段階にすぎません。精神の健康のための基礎段階にすぎないのです。その段階では、疾病を予想できるだけです。次の段階として、自分が抱えている病と中毒性の根を抜くための苦労に、自分自身を最大限に投入しなければなりません。治療を始めなければならないということです。
（つづく）
