創世記と量子論の統合宇宙論Ⅱ―第9回(総括)三層宇宙論による統合的創造論

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序―これまでの考察と最終的な問い

本シリーズは、「なぜ重力だけが特別なのか」という、一見すると物理学的な問いから始まりました。

しかし、考察を重ねる中で、その問いは次第に広がり、宇宙の構造、生命の誕生、言語に刻まれた直観、そして神学的創造論へと接続されてきました。

最終回である本回では、これまでの考察を三層宇宙論の枠組みの中で統合し、「重力とは何か」という問いに、全体的な視野から答えを求めようと思います。

 

1.三層宇宙論による対応構造の整理

三層宇宙論において、世界は単一の平面ではなく、役割の異なる複数の層から構成されていると理解します。

霊的層は、意味、価値、愛、人格といった、測定可能な物理量には還元できない次元を担っています。この層において働く中心的原理は愛です。

愛は、人や存在を意味の次元で引き寄せ、関係を成立させ、持続させる力であり、いわば「意味の引力」として働いています。

量子層は、存在の基盤となる層であり、時空やエネルギー、情報の根源的構造が定まる領域です。この層において中心的な役割を果たしているのが重力です。

重力は、物体を動かすための力というよりも、存在そのものが一つの世界として成立するための条件を整える力であり、「存在の引力」と呼ぶことができます。

物質層は、原子、分子、天体、生命体といった具体的な構造が展開される世界です。この層では、電磁気力、強い力、弱い力が主に働き、構造と結合が形成されます。

物質層は、上位の二つの層で与えられた引力と秩序の条件のもとで、具体的な形を取って現れている世界と言えます。

 

2.なぜ重力は最弱でなければならなかったのか

この三層対応を踏まえると、重力が四つの力の中で最も弱いという事実は、もはや不可解な欠陥ではありません。

重力が担当しているのは、物質内部で互いに影響し合う相互作用ではなく、存在の舞台そのものを成立させる役割です。

そのため、原子や分子の内部に強く介入する必要はなく、むしろ介入しすぎてはならないのです。

もし重力が電磁気力や強い力と同程度に強ければ、安定した物質構造は成立せず、生命が生まれる余地もありませんでした。

重力が弱いという事実は、物質層が自律的に構造を形成できるための前提条件であり、重力が「背後に退いた力」として働いていることの証しです。

最弱であることは、無力であることではなく、全体を支えるために前に出ないという性質を示しています。

 

3.なぜ宇宙は重力の分離から始まっているのか

本シリーズで繰り返し確認してきたように、宇宙の始まりは、破壊や拡散ではなく、引き寄せと結合の原理によって特徴づけられています。

創世記における「光あれ」は、区別と秩序の始まりであり、物理学的には、「対称性の破れ」による構造化の開始と対応していました。

その最初の分離として重力が現れたという見方は、宇宙がまず「結び保つ原理」を確立したことを意味しています。

宇宙が重力の働きとともに始まったという事実は、世界の根底に、分断ではなく統合へと向かう性質が据えられていることを示しています。

重力は、最初に分離した力として、宇宙全体を一つの舞台にまとめ上げ、その上で他の力や構造が展開される余地を与えました。

 

4.創造とは結ぶことである

この視点から見ると、創造とは何かという問いにも、一つの明確な答えが浮かび上がってきます。

創造とは、無から有を生み出す魔術的行為というよりも、分かれ得るものを結び、ばらばらになり得るものを一つに保つ行為です。

聖書はこの点を、「神は愛である」(ヨハネの第一の手紙4章8節)という言葉で表現しています。愛とは、存在を引き寄せ、結び、保つ力です。

重力が物理的世界において存在を一つにまとめているように、愛は意味と人格の世界において存在を一つに結び続けます。

愛と重力は、異なる層に属しながら、同じ構造を持っているのです。

 

5.重力とは「存在論的愛」

以上を総合すると、本シリーズの結論は明確です。重力とは、単なる自然法則の一つではなく、「存在論的愛」が物理世界に現れた姿であると理解することができます。

ここで言う「存在論的愛」とは、存在と存在を結び、保ち、成り立たせる根本的な働きのことを意味します。

重力は、競争せず、誇示せず、静かに、しかし確実に、世界を一つに保ち続けています。その姿は、聖書が語る愛の性質と驚くほどよく一致しています。

重力は、存在を結び保つ創造の働きが、最も基本的な形として世界に現れたものと言えるでしょう。

本シリーズは、物理学と神学、宇宙論と創造論、科学的事実と言語的直観を対立させることなく、構造的対応として読み解く試みでした。

そこから見えてきたのは、世界が偶然の集合ではなく、結びと統合を志向する秩序の中に存在しているということ、そしてその秩序を成立させているのが、存在の引力としての重力であり、意味の引力としての愛であるという事実です。

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